同じ唐揚げを食った仲

 大阪弁護士会の研修に行った。法科大学院の同期で司法修習64期の藤田大輔先生がいた。久しぶりに会った。
 藤田先生とは法科大学院生時代,毎日一緒に自習した仲だ。というのは嘘で,毎日一緒に唐揚げ弁当を食べた仲だ。というのも嘘で,飽きもせず毎日唐揚げ弁当を食べていたのは私だけだ。しかし,藤田先生もこの弁当屋の唐揚げを非常に高く評価しており,ある年のクリスマスイブにはここの唐揚げを限界まで食べてみようと藤田先生が言い出し,私が弁当屋に予約注文をして,実際に限界まで食べたことがある。弁当屋のイケメン兄ちゃんはニヤニヤしながら大量の唐揚げを渡してくれた。藤田先生は「明日はみんな顔テッカテカになってるんちゃうか」と言って笑っていたが,その場にいた者全員,翌日特にどうともならなかった。それより食べている最中がつらかった。普段唐揚げを食べていると,皮に衣がついただけのような小さいのが特に美味い。味と油の塊だ。しかし,唐揚げを限界まで食べようとしていると,この小さいのが特にきつい。食道がどんどん油でコーティングされていくような感覚が苦しい。この点において,藤田先生と私とで意見の一致をみた。
 もちろん,私と藤田先生はただ唐揚げを食べていただけではない。勉強場所としていた大学図書館で一番面白い本を持ってきた奴が勝ちという遊び等もした。この時はたしか藤田先生がどこかから明治大正時代頃の手紙か何かを集めたような古い資料を持ってきて,私が法律の勉強そっちのけで読みふけって終わったような記憶がある。
 このように有能な藤田先生は,過去4年ちょっとの間,弁護士法人ALG&Associatesで一般民事事件(離婚,交通事故,不動産関係等)の他に専門分野として患者側の医療過誤事件を扱うアソシエイトとして大活躍されていた。いや,事務所を覗いたことはないのだが,私が何かわからないことがあって藤田先生に質問すると,藤田先生はいつも私が期待した5倍ぐらいの速さで,私が期待した4倍ぐらい量の情報を答えてくれるので,普段から大活躍しているに違いないのだ。
 しかし,今日会って話したところ,今年2月末に今の事務所を退職する予定だという。もったいない話だと思って聞くと,要するに,今の事務所では個人受任ができないため「仕事を取る」という仕事をしなくてよいところに物足りなさがあるという。そのため,個人受任が可能な事務所を探しているという。それは,わかるような気がした。